ジョージ先生から、新認定指導者のみなさまへ
この夏、3年半ぶりに東京本部で認定指導者試験が開催されたことに伴い、ヨーロッパ支部長であるスイスのジョージ先生から、メッセージを頂きました。
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〈井本整体のリーダーとして〉
認定指導者に任命されることには、非常に多くの意味があります。患者さんや生徒さんが井本整体に抱く第一印象は何か。どんなに言葉をつらねるよりも、私達の態度ひとつが、より多くを物語ります。立派な言葉やセオリーよりも、我々のたたずまい、そこにこめられた気が、井本整体とは何かを表しているのです。
私の患者さんの多くは、井本整体についてよく知りません。けれど、何か不調がある時、彼らは私に電話してきます。私が患者さんのために何ができるかは、私が道場でどんな哲学、技術を学んできたかと密接な関係があるのです。
〈指導者に求められる資質は、謙虚であること〉
日本に来る度、私は限られた時間の中で可能な限り多くを吸収しようと努力します。どんな機会も、ポジティブなことはもちろん、ネガティブなことからも多くを学べます。練習中、井本先生がじっと私を見ていて、大きな笑顔とともに「ジョージ、大丈夫??? 」と訊かれる時、私は何かやりかたがまずかったのだと気づきます。井本先生も講師の先生方も、私達が自分のベストを出せるよう忍耐強く教えてくださいます。だからこそ、認定指導者となった今でも、いただけるどんな小さなアドバイスも大事にしたいのです。できない自分自身にはよく腹が立ちますが…。
井本整体の膨大な知識体系を、誰にでも理解できるように伝えること。そんな非常に難しいチャレンジに、井本先生も講師の先生方も挑んでくださっています。どなたが仰ったのだったか、いつもこの言葉を思い出します。「先生の言葉を聞いて理解するのと、自分がそれをできるかどうかは全く違う。」井本整体の認定指導者、体操指導者にもっとも求められる資質は、常に謙虚であることなのです。
〈試験を受ける前と後で変わったこと〉
8年前、認定指導者試験に合格した後、私は突然気がつきました。ここスイスでもヨーロッパでも、誰もその事実を知る人はいないのです。任命証は私の道場に飾られています。それが私自身にとってとても多くを意味するからです。しかし、私の患者さんにとってはなんの意味ももちません。患者さんは、壁にかけれた任命証によってではなく、あなたが実際に行うこととその結果によって、あなたを判断するのです。けれど多くの患者さんが、任命を受けたあと、私の技術の何かが変わったと言いました。より精密でより効果的になったと。
試験に通った時、私は自分の持てる可能性を全て出し切ろうという心境でした。多くの経験を持つ指導者の先生方に自分を判定していただき、自分の限界を知る非常に貴重な機会になりました。先輩方の意見は、私の実力をはっきりさせてくださるからです。
〈銘が刻まれた刀〉
井本整体の勉強を始めた時から、私は自分の名前が書かれた緑色のバッジをつけるところをイメージしていました。緑のバッジが認定指導者を意味することを知ったのは、それからずっと後でした。その時でさえ、認定指導者が何を意味するか、本当にはわかっていませんでした、その資格を得るのがとても難しいのだろうということ以外には。「緑色のバッジ」は長い間私にとって、ひとつの憧れでした。
ある時、スイスに帰る前に開いていただいた食事会で、小林先生が言われました「いいですかジョージさん、日本の刀は、世界的に見ても貴重なものです。けれど、普通の刀と、銘が入った刀には違いがあります。両方とも刀には違いない。けれど銘が刻まれた刀は、その道のマスターから認められたことを意味しているのです。」それを聞いて、その通りだと思いました。小林先生が私に伝えようとなさった深いメッセージを理解しないままに。
数年後の春、いつものように東京本部を訪ねた時、私の滞在期間中に認定指導者試験が開催されると聞きました。良いことだと思いましたが、自分と関係があるとは全く考えませんでした。1年に数週間しか日本に滞在できない私にとって、そのような大きな挑戦をするには、能力が十分でないと考えていたからです。私の後ろ向きな返事を聞いた事務局スタッフは、試験の内容、求められる技量について、もう一度シンプルに説明してくれました。最後には私は「そうですね、挑戦してみましょう。結果がどうあれ、得難い経験に違いありません。多くを学べるでしょう」と答えていました。次に私が日本に滞在している時に試験が行われる可能性は、ゼロに近いからです。
試験が終わり、「この者は公けに認められた指導者である」と書かれた任命証を受け取って初めて、私はその意味を本当に理解しました。それまでは、後輩という居心地の良い立場でしたが、これから先は、リーダーになることを井本先生から期待されているのだと突然理解したのです。このことは多くを変えました。今から先は、井本先生が私達に惜しみなく共有してくださったこの膨大な知識を広めていく責任を、私自身が負うのです。なんという挑戦でしょう。
コロナのせいで4年間日本に伺えなかったあと、今年ようやく、東京本部で生徒のみなさんと再会できたことは、私にとって大きな喜びでした。4年前に初等講座だった生徒さんの多くがプロ講座生となっており、本当に高いレベルになっていました。加えて、彼らは井本整体の深い「魂」の部分をちゃんと理解していました。そのことは大きな感銘でした。それは講師の先生方全員のレベルがとても高いことを意味します。みなさんに心から拍手をおくりたいです。長年にわたって井本先生の知識を伝えていく重要な役割を担ってくださった先輩方のことも決して忘れません。井本先生が創りあげられた井本整体を、指導者の先生方、先輩方が連綿と受け継いでいく。その事自体、たぐいまれなギフトなのだと思います。
深い尊敬をこめて
ジョージ
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