テーマ別セミナー「子育てと人体力学」
矢代清香さん(井本整体体操指導者)
●胎教について
私自身、「これは妊娠中楽しみだな」と思って大事にしていたことが3つありました。まず、①お腹に話しかける。大したことでなくても、たとえば散歩に行った時に、「今日はあったかいね」とか、「今日は誰々が遊びに来ているよ」とお腹に話しかけて、②お腹に導気(手をあてて、優しい気持ちを送ること)をしました。そして③呼吸法をする。
私はよく、骨盤呼吸法を行っていたのですが、この呼吸法をやったあとは、いつもお腹がすごく動いたり、2人目のお子さんを妊娠中のママ友にこの呼吸法を教えると、軒並み、2人目のお子さんの方がお腹の中でしっかり育ってくれたと言われました。
私も、お腹の中でしっかり育った3548グラムの男の子を出産しました。生まれてからも、おっぱいをどんどん飲んで、いつもご機嫌に過ごしています。何をしたいかという要求がよくわかるので、あまり泣きませんし、泣かなくても、あ、今お腹が空いているんだなとか、そういう事がよく伝わってきます。お腹の中にいた時によくコミュニケーションを取っていたからなのだと思います。
●子どもの体の診方について
子どもの体の調子を見るポイントというのがいくつかあるのですが、私が特に見ていたポイントは、まず目です。たとえば熱が出たあと。熱が下がったけれども、もしどんよりした目をしていたら、まだそれは完全に回復している訳ではないというサインになると思います。
それから皮膚の状態ですね。お風呂に入った時に体を洗いながら触ってみて、ガサガサしている所は流れが悪い所だったりします。お腹が、手を乗せた時に手に吸い付いてくるような、つき立てのお餅のようなお腹をしている時は、とても元気な状態です。逆に、お腹がへこんでしまったり、元気がない状態の時には、少し注意が必要です。
●赤ちゃんの夜泣き
それから、ごろごろ、もぞもぞしていて、何か寝付けないなという感じがあったり、夜泣きをしたりする事も、何度かありました。ごろごろ、もぞもぞしているのは、何か理由があるはずです。体調が良くないのかもしれないし、昼間、すごく強い刺激(大きな物音・電車に乗る・初めての所に行く、など)があって、緊張が取れないのかもしれません。
そんな時は、背骨を触ってみます。どこか出っ張っている骨に触れたなら、そこが流れの悪い所です。そこに、先ほど実験したように優しい気持ちで導気をしていると、赤ちゃんの背骨というのは意外と変わりやすくて、出っ張っていた骨がスーッと引っこんでいったりするのです。すると、スッと寝る。そういうことが何度もありました。
●咳、腹痛、原因がわからない不調
それから、咳が止まらない、お腹が痛い、心理的なストレスがある、なんだかわからないけれども調子が悪い、という時。症状として見たら、全然違うことのようですけれども、こういう時にやることが一つあります。肋骨寄せです。背中側から赤ちゃんの肋骨を抱えて、左右の肋骨を真ん中にスッと寄せるようにして、導気をします。
例えば咳が止まらない時というのは、たいていどちらかの肋骨が下がっていたり、左右の肋骨の感触が違うのです。それがちょっと中心に寄って呼吸が入ると、咳がスッと止まったりします。
お腹が痛い時に肋骨寄せというのは、私の息子の場合、夏のすごく暑い時期に、お腹が痛いというのがありました。腹部寄せをしてみたけれども治まらない。暑さで肋骨が下がってしまって、それでお腹が痛いという時には、お腹が痛い時でも肋骨寄せをしました。他にも、なんだかよくわからないけれども具合が悪いという時に肋骨寄せをすると、意外に効いたりします。
背骨に導気をすることと、肋骨寄せ。この2つを知っているだけで、子育て中のかなりの事に対応でき、すごく楽に楽しく子育てをさせてもらっているなと思っています。
●お母さんが元気で過ごすために
実際には、子育てと介護をしている人が、一番疲れている。これも井本先生のお言葉です。本当に疲れていると笑顔が出ません。子どもの気持ちを察してあげる余裕も出てきません。子育てはなぜ疲れるかというと、やはり抱っこが多いです。抱っこして腕に負担がかかると、前屈みになって背中が開いてきます。(中略)かわいい自分の子どもがこちらを向いて笑っているのに、かわいいと思えない。そういうお母さんが結構多くて、自分は愛がないのじゃないかという相談を、インターネットなんかでも結構見ることがあります。そうなってしまうと、子育てが非常にきついことになるのですが、実はそれは「愛」の問題ではなくて、「肺」の問題だと思うのです。
人体力学と子育てというテーマで、本当は一番お伝えしなければいけないのは、女性の産後の過ごし方だと思います。きちんと骨盤が元に戻るまで経過するということが、本当は一番大事なことです。今日はとても全てお話できないのですが、すぐに知りたいという方は、井本先生の「整体法 妊娠・出産・子育て」(三樹書房)をぜひお読みになってみてください。
(人体力学・井本整体 機関誌「原点」2020年1月号より 一部抜粋)
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